公衆衛生

公衆衛生とは?

1.感染症(かんせんしょう)と最前線で戦っている保健所とは?

今回の新型コロナウイルス感染症では、「息苦しさや高熱のある人はすぐに病院に行かずに、まず保健所に相談してください」 と、よくテレビで呼びかけていましたよね。
それはウイルスに感染した人が病院に行くと、その病院に来ている体調の悪い人達にウイルスを感染させてしまうリスクがあるからです。

お年寄りや病気でからだの抵抗力が弱っている人はウイルスに感染しやすく、また症状も重くなりがちで、特に今回の新型コロナウイルス感染症のように検査や治療の体制が確立していない中ではまずは感染を防ぐことが最も重要です。そのため3密(密閉・密接・密集)を避(さ)けようとか、ソーシャル・ディスタンスをとろうという呼びかけが全国で展開(てんかい)されています(情報1)。

保健所や保健センターは全国にあって(情報2)、「健康を保つ」=「保健」のための活動をしている組織です。

保健所にも専門家(せんもんか)がいるよ!
医師、保健師、検査技師など
地域保健(ちいきほけん)の重要な役わりをになっています!

地域保健と(情報3)呼ばれる活動の中心でもあります。

2.公衆衛生とは?どんなお仕事?

地域保健は、一人一人の健康だけでなく、その人たちが住んでいるエリア全体の健康を守ることをいいますが、これをさらに広いエリアで取り組んでいく活動が公衆衛生です。

そもそも「健康」ってなんでしょう? いろんな考え方があり、時代によっても変わってきますが、国際連合の機関である世界保健機関(WHO)では、「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱(きょじゃく)でないことではない」としています(情報4)。つまり、病気じゃないっていうだけではなくて、いきいきしているのが健康だということですね。

みなさんは、お母さんが母子健康手帳に身長や体重、予防接種の日付や保健所での検診(けんしん)の結果など、子どものいろんな成長の記録をずっと取り続けていることを知っていますか?これも公衆衛生のひとつで、みんなであなたのからだとココロの成長を見守ってくれています。

テレビの医療ドラマのようにはなやかな世界ではないけれど、公衆衛生はとても大切な、なくてはならないお仕事です。保健の活動エリアを地球規模(きぼ)でみる場合は、国際保健といいます。

ワクチンの回で説明していますが、天然痘(てんねんとう)の対策(たいさく)として初めて予防接種に成功したジェンナーや、江戸時代の日本でその予防接種を積極的にひろめた緒方洪庵(おがた こうあん)、アフリカで地域保健に取り組んでノーベル平和賞を受賞した医師のシュバイツァー、最近ではアフガニスタンで地域の健康に尽力してきた中村哲(なかむら てつ)医師など、国境をこえて多くの人たちが活やくしてきました。今でも途上国(とじょうこく)から先進国まで、世界中で医療や福祉、保健を支えてくれている人達がたくさんいます。

3.公衆衛生をやってる人って、どんな人?

公衆衛生の専門家の例として、ピーター・ピオット先生の活動をご紹介(しょうかい)しましょう(情報5)。ピオット先生はベルギー人の医師で、アフリカでエイズの患者さんのための地域保健活動をしていた時に、多くの患者さんがエイズだけでなく結核(けっかく)も発症(はっしょう)してなくなっていることを発見しました。その後、世界のエイズ対策で結核の存在(そんざい)が重視(じゅうし)されるようになり、治療の流れを変えた重要な人物となりました。
ピオット先生はさらにアフリカで今度はエボラ出血熱がウイルス感染症であることを発見し、その対策(たいさく)に奔走(ほんそう)する中で国際的な保健支援(しえん)のネットワークとしてグローバル・ファンドの設立や各国の支援を呼び掛けてきました。

こうしたピオット先生の冒険談(ぼうけんだん)は回顧録(かいころく)として本になっています(情報6)。これまで、エイズにもエボラにも全く感染しなかったピオット先生ですが、その後なんと新型コロナウイルスに感染してしまい、重症化(じゅうしょうか)して集中治療を受けてようやく回復したそうです(良かった、良かった)。

このように、地域の現場で活動したり、国際機関で様々な協力の調整をしたり、大学で教育や研究をしたり(ピオット先生はロンドン大学の公衆衛生・熱帯医学大学院の学長でもあります)と、様々な場所でいろんな人が公衆衛生を支えるために活やくしています。

途上国での公衆衛生には国自体に予算がないところが多く、各国からの支援が欠かせません。日本は世界有数の資金拠出国(しきんきょしゅつこく)であり、またマイクロソフト社の元会長であるビル・ゲイツさんが設立した財団のように国家的な規模の資金を動員して治療薬の開発を進める民間団体もあります。興味があったらいろいろ調べてみましょう!

<言葉の説明>

【マイクロソフト社】
アメリカの会社で、パソコンのソフトウェアを作っている世界的に大きな会社です!
【財団】
決まった目的のためにお金を集めているところです。
目的は財団ごとにいろいろありますが、社会やこまっている人を助けるためのもの、教育や福祉活動に関わるものなどがたくさんあります。

<まとめ>

今回は新型コロナウイルス感染症の話題を中心にして、病院以外で行われている保健活動について紹介しました。保健所での検査など、今まであまり気づかなかったかもしれませんが、実はとても大切な役目を果たしてくれています。

感染症以外にも、みんなの学校にある保健室でいろんな相談にのってもらうことも大切な保健活動の一つです。ケガや病気でなくても、友達のうわさやSNSで傷ついたなぁ、となやんだ時に相談できる学校保健があると安心ですね。

公衆衛生には医師や看護師、薬剤師などの資格を持つ人たちだけでなく、様々な調査をしてデータを集めたり、対策を考えたり、説明をしたりと、多くの人が関わっており、そのチームワークがあって初めて成功する社会的なビッグ・プロジェクトです。一人ではできないことも、みんなで手分けしてやれば大きな成果につながります。

<参考となる情報>

1.厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#kokumin

2.厚生労働省 設置主体別保健所数

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000617302.pdf

3.厚生労働省 地域保健

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/tiiki/index.html

4.外務省 世界保健機関憲章

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000026609.pdf

5.内閣府 ピーター・ピオット博士の略歴

https://www.cao.go.jp/noguchisho/award/02/prize/peterpiot_profile.html

6.ピーター・ピオット「ノー・タイム・トゥ・ルーズ」 慶応義塾大学出版会

https://www.keio-up.co.jp/kup/sp/notimetolose/

2020-09-17|
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